世界のスーパーマーケットのラクトースフリー事情については以前、以下の記事でお伝えしました。この記事では、スーパーに限らず、ラクトースフリー商品に関わるあれこれをご紹介していきます。

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概要
乳糖不耐症の原因となる乳糖をあらかじめ除いた、「ラクトースフリーミルク」。近年、このラクトースフリーミルクへの関心は非常に高まっており、あるレポートによると、ラクトースフリーの世界市場は毎年約10%もの高水準で成長しています。

また、同様に乳糖不耐症者の味方である「植物性ミルク」(代替乳)の市場も同様の高水準で拡大しており、2024年には全世界で約2兆2千億円(210億ドル)に達する見通しです。

この記事では、スーパーの棚に限らず、ラクトースフリー商品にまつわるあれこれをご紹介していきます。
ドイツ編🇩🇪
ドイツの本屋さんでは、ラクトースフリーに特化したレシピ本が並んでいます。
表紙のステーキのように元々乳製品を使わないメニューや、牛乳をラクトースフリー牛乳に置き換えただけのレシピも多く含まれていましたが、こういう本が普通に流通している、というところに乳糖不耐症の認知度の違いを感じました。


なんと、乳糖不耐症の説明に特化した幼児向け絵本もあるから驚きです。
スウェーデン編🇸🇪
近年、環境問題への関心の高まっているスウェーデン。
最近ではヴィーガンメニューの増加に伴い、国内大手の「MAX」というハンバーガーチェーンなどで「乳不使用」のミルク(?)シェイクが売られています。
実際に試してみましたが、牛乳が入っていないのが信じられないほどクリーミーな味わいでした。
普通のシェイクは乳糖+冷たさのダブルパンチでお腹を壊してしまいがち。特に夏場には、日本のファストフード店にも、こういう商品が欲しいところです。

イタリア編🇮🇹
実は世界トップクラスのラクトースフリー大国、イタリアでは、毎年ラクトースフリーの商品だけを集めた国際展示会が開かれているそうです。
その名もずばり「ラクトースフリーエキスポ」。インターネット上でプロモーションビデオを発見しましたが、ヨーロッパにおけるラクトースフリー市場の大きさと、企業などの関心の高さがよく分かる動画ではないかと思います。
また、イタリアに本拠地のある「ELLEFREE」社では、フェアトレードマークやレインフォレストマークのような、「ラクトースフリー マーク」の認証を行っているようです。
実際の普及率は不明ですが、こうしたマークがあれば、消費者が自分の体質に合った商品を選択する上で非常に助かるのではないかと思います。

韓国編🇰🇷
お隣、韓国では、「Maeil」社という会社が2005年からラクトースフリーミルクを発売しています。
乳糖含有率が 0.05% と、日本では手に入らない高水準です(※日本では乳糖含有率が20%以下の商品は発売されていません)。
店頭での手に入りやすさなどは不明ですが、それでも比較的簡単に手に入ると思うので、韓国の人たちが羨ましい限りです。
といっても、人口に対する乳糖不耐症者の割合は日本とほとんど変わらないはずなので、「日本でも需要があるんだ」ということを我々当事者が主張し続けていれば、いつかは、日本でも乳糖含有率が0.1%以下のラクトースフリーミルクを発売してもらえるのでは、と思っています。

以上、「世界のラクトースフリー事情〜その他編〜」でした。
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- その他にも、極小の穴が空いた膜を使って乳糖を漉し取る「膜分離技術」という方法があります。この方法ではラクターゼを使用する必要がないため、乳糖を分解した際に生じる単糖類による食味の変化がなく、牛乳本来の風味をほとんど損なわないという利点があります(関 信夫「乳製品製造における膜分離技術」)
- 乳糖が分解されるとガラクトースやグルコースという単糖類が生じるため、砂糖無添加でも甘味を感じられるヨーグルトなど、「ミルク本来の甘味」を引き出した商品開発が可能になるようです(濱口和廣(2011)「酵母由来ラクターゼ」)
- 乳糖を8割カット(=2割に削減)した商品は日本でも売られているのですが、もともとの牛乳の乳糖含有率が4.5%なので、乳糖含有率は0.9%以上にとどまってしまいます。ただし、乳糖の8割はカットされているので、症状の軽減には十分役に立ちます
- Industry Arc, Lactose Free Food Market – Forecast(2019 – 2024)”
- この記事の執筆者が実際に訪れた国や、知人に撮影してもらったもの、Twitterで寄せていただいた情報などをもとにしています