乳糖不耐症の対処法 − 「大人の乳糖不耐症」の対策

乳糖不耐症のメカニズム-アイキャッチ画像

大人の乳糖不耐症 − 症状と付き合うための3つの対策

乳糖不耐症の対処法は、大きく分けて次の3種類に分けられます。

  1. 自分の許容量を確かめる
  2. 乳糖の摂取をコントロールする
  3. ラクターゼの錠剤を服用する

大人の乳糖不耐症は特に完治するのが難しいと言われていますが、正しい対処法を知ることで症状を抑えることができます。このページでは、大人の乳糖不耐症について、以上3つの対策について、ひとつずつ解説していきます。

対策1:自分の許容量を確かめる

はじめに、症状をコントロールするためには、自分の「許容量」を確かめることが重要です。自分がどれくらい乳製品を摂取できるのかを知ることで、許容量に合わせて、乳糖の摂取量をコントロールできるようになります。

しかし、その前に、まずは体調不良の原因が本当に乳糖であるかどうか、確かめる必要があります。まずは、次のチェックシートを試してみてください。すべての項目に当てはまる場合、その症状は単なる消化不良ではなく、乳糖不耐症が原因である可能性が高いと言えます1

ただし、最後の項目にあるように、皮膚や呼吸器にも症状が出ている場合は牛乳アレルギーの疑いがあります。皮膚や呼吸器に症状がある場合は、決して自己診断はせず、必ず医師の診察を受けるようにしてください2

体調不良の原因が乳糖であると特定できたところで、次に、自分の許容量を測る「実験」をしてみましょう。具体的には、空腹時などに牛乳を少しずつ飲み「実際に症状が出るまでに飲むことのできた量」が自分の許容量になります。

あまり厳密に計算する必要はありませんが、牛乳には約4.5%の乳糖が含まれているので、ある量まで牛乳を飲んだ後に症状が出た場合の乳糖許容量は、

{ 症状が出るまでに摂取した牛乳の量(mL) × 4.5 % × 1/100 }g

となります。この時、コップ2杯程度まで問題なく牛乳を飲めるようであれば日常生活に問題はありません。

逆に、普段から症状の重い方の場合は、より慎重に実験を行う必要があるため、乳糖が1/5までカットされた雪印メグミルクの「アカディ」の使用をおすすめします。その場合の乳糖含有率は 0.9%で計算し、許容量は、

{ 症状が出るまでに摂取したアカディの量(mL) × 0.9 % × 1/100 }g

となります。

以上のように、自分の乳糖許容量を大まかに知ることができます。あくまで大雑把な把握ではありますが、「自分はコップ1杯でダメなんだ」「本当に微量でも反応してしまうみたい」など、自分の体質が改めて実感でき、症状をコントロールするための第一歩になります。

もちろん、確実な診断が欲しい場合や、診断書等が必要な場合は、内科や消化器科等の受診が必要になります。病院によっては検査をしていないところもあるので、予約の際に一言確認しておくことをおすすめします3

対策2: 乳糖の摂取をコントロールする

対策1で分かった自分の「許容量」を超えて乳糖を摂取しなければ、乳糖不耐症の症状が出ることはありません。例えば、牛乳1杯分の乳糖で症状が出るのであれば、一度に摂取する乳糖の合計量をそれ以下に抑えることで、症状を回避することができます

食品ごとの乳糖含有量は、概ね下表のようになっています。

文部科学省 食品成分データベースより主要食品の乳糖含有量

食事のたびに厳密に計算する必要はありませんが、何にどれくらい乳糖が含まれているかという、大まかな目安になります。

一般に、チーズ類は発酵の過程で乳糖が分解されているため症状が出にくいと言われています。ただし、一部のフレッシュチーズでは乳糖の大部分が残っているため、注意が必要です。

また、ヨーグルトは乳糖含有率は高いものの、乳酸菌の働きで症状が出にくいことが知られています4乳糖を完全に絶ってしまうと症状が一気に進むことがあるため5、乳糖が含まれていながら症状が出にくいヨーグルトは、症状の進行を抑える対策としても有効です

さらに、乳糖の一部をあらかじめ分解した低乳糖牛乳も販売されています。国内では雪印メグミルクの「アカディ」や、デーリィ南日本酪農協同株式会社の「おなかにやさしいミルク」などが販売されています6

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なお、症状が軽度であれば、牛乳を温めて飲むことも有効であると言われています7

対策3: ラクターゼの錠剤を服用する

乳糖不耐症は、乳糖を分解する酵素である「ラクターゼ」を腸内で生み出す力が衰えることによって発症します。そのため、この酵素を体外から補うことによって、症状を大きく抑えることができます。

ただし、日本国内ではラクターゼ製剤は処方薬(医療用医薬品)に分類されているため、普通の薬局では手に入れることができません8医師の診断を受け、処方箋をもらってはじめて購入することができます9

Nature's Way社のラクターゼ(乳糖分解酵素)製剤のパッケージ
(画像:アメリカで販売されているラクターゼ製剤のパッケージ)

そのため、日本国内でラクターゼ製剤を入手するための方法として、一般に、海外の通販サイトを使って「個人輸入」するという方法が知られています10

あくまで「対症療法」であり、また人によっては効果が薄いことが知られていますが11、諸外国では実際にラクターゼ製剤は乳糖不耐症の最終兵器として普及しています。ラクターゼの服用による症状抑制の効果は多数の研究によって実証されており、海外での事例では、実際に生活の質の大幅な上昇につながることが知られています12

医薬品規制により、少し面倒な手続きが必要になってしまいますが、ひとつの手ではないかと考えます。薬事法における医薬品等の広告規定に抵触する可能性があるため、購入可能なウェブサイト等への誘導はできませんが、興味のある方は是非調べてみてください。

大人の乳糖不耐症の「治療」

以上、乳糖不耐症の症状と付き合うための3つのステップをお伝えしました。

残念ながら、どの方法も基本的には「対症療法」であり、根本的な問題の解決にはなりません。乳糖不耐症の根本的な「治療」には、腸内でラクターゼを生み出す力を取り戻すことが必要ですが、腸内のラクターゼの減少は加齢に伴う「自然な現象」で、一度失われてしまった乳糖の分解能力を取り戻すことは非常に難しいと言われています13

とはいえ逆に、前述のように、「乳糖を完全に絶ってしまうと症状が一気に進むことがある」ということは知られていますし、中には、継続的に乳糖を摂取することで乳糖への耐性が向上する、とする学説もあります14

また、いわゆるプロバイオティクス(善玉菌)の摂取全般が乳糖不耐症の症状の緩和に有効であるという研究15や、とりわけヨーグルトに含まれるビフィズス菌やブルガリア菌が有効だとする研究報告16も存在します。

他方で、ラクターゼを生み出す腸内細菌を含む、腸内細菌叢(腸内フローラ)の仕組みは非常に複雑で、完全に解明されているわけではありません。現在のところ、「我慢して牛乳を飲んでいればそのうち消化できるようになる」とまでは言えない(そのように言い切る科学的根拠は不十分)、というのが現状ではないかと思います。

それでも、「乳糖を完全に絶ってしまうことが良くない」ということに変わりはありません。そのため、乳糖不耐症協会では、大人の乳糖不耐症に対する対処法として、「適度な乳糖摂取による現状維持」+「食事管理とラクターゼの服用による対症療法というのが、(現時点で判明している限りでの)最適解ではないかと考えています。

▶︎乳糖不耐症についてさらに詳しく学びたいという方は「ブログページ」をご参照ください。

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注釈

  1. また、後述するようにラクターゼ製剤を服用することによって症状が治まる場合は、その可能性がより高いと言えます。逆に、乳脂肪を分解できずに症状が出ている場合は、低脂肪牛乳や無脂肪牛乳を試すと症状が無くなります
  2. また、乳児の乳糖不耐症には先天性のものと下痢などによって生じる二次性のものがあります。それぞれ特別な対応が必要なため、赤ちゃんの下痢が長引く場合は医療機関を受診してください。乳児の乳糖不耐症についてはこちらのページが参考になります
  3. 病院での検査内容については、MEDLEY「乳糖不耐症の検査」をご参照ください(最終閲覧 2019年10月)
  4. 村尾周久[他](1992)「乳糖不耐症者による牛乳とヨーグルト飲用後の呼気中水素と腹部症状の相違」
  5. 酵素を出してくれる乳酸菌の「餌」として、症状を抑えながら適度に乳糖を摂取することが重要であるようです(Rachel Hosie (2018) Cutting ut dairy can make you lactose-intolerant 2019年10月14日閲覧)
  6. これらの牛乳では、ラクターゼの添加によって乳糖があらかじめ8割カットされているので、普通の牛乳と比べて、単純計算して5倍は症状が出にくいということになります。ただし、症状の進行度によっては低乳糖牛乳でも症状が出てしまいます。乳糖含有率が0.1~0.01%以下の「ラクトースフリー」牛乳(無乳糖牛乳)であれば確実に症状が出ませんが、残念ながら日本では販売されていません。詳しくは「世界のラクトースフリー事情」をご参照ください
  7. 牛乳を温めても乳糖が分解されるわけではありませんが、冷たい牛乳を飲むことによる胃腸の働きの低下を防ぐことができます
  8. 国内にも「ビオラクターゼ 」「新ビオラクターゼ S錠」という名前で販売されている商品(指定医薬部外品)がありますが、これらはどちらもラクターゼを含んでいません
  9. ただし、現在販売されているラクターゼ製剤のうち、公式に成人を処方対象としている薬はありません。国内で認可されているのはガランターゼ、ミルラクト、カラシミーゼ、オリザチームの4種類ですが、全て「乳児」または「経口・経管で流動食・栄養食を摂っている人」を処方対象としています。そのため、病院でもラクターゼ製剤を処方してもらえない可能性があります
  10. その他の方法として、海外旅行等の際に国外で購入することもできますが、薬事法により、一度に国内に持ち込める量は「通常の用量用法で1ヶ月分以内」に限られます(厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」2019年12月閲覧)
  11. Ibba I. [et al] (2014) Effects of exogenous lactase administration on hydrogen breath excretion and intestinal symptoms in patients presenting lactose malabsorption and intolerance
  12. 例えば、付き合いでどうしても乳製品を食べなければいけない際や、「症状が出てもいいから食べたい」と思うものを食べる際でも、ラクターゼを服用することで、症状を抑えながら食事を楽しめる可能性があります
  13. MEDLEY「乳糖不耐症と言われたら知っておくべき注意点」(2019年12月閲覧)。ただし、乳児の二次性乳糖不耐症に関しては、急性胃腸炎などによって腸がダメージを受けてしまったことが原因のため、適切な治療を行えば自然に消化能力が回復します
  14. Szilagyi A (2015) Adaptation to Lactose in Lactase Non Persistent People: Effects on Intolerance and the Relationship between Dairy Food Consumption and Evalution of Diseases. また、いずれも被験者数が30人以下の小規模のものではありますが、約3週間かけて乳糖摂取量を少しずつ増やした実験(Pribila BA [et al.] (2015) Improved lactose digestion and intolerance among African-American adolescent girls fed a dairy-rich diet; Pribila BA [et al.] (2015) Improved lactose digestion and intolerance among African-American adolescent girls fed a dairy-rich diet)や、6−12週間に渡って追跡調査を行った実験(Johnson AO (1993) Adaptation of lactose maldigesters to continued milk intakes)では、少しずつ乳糖摂取を増やしていくことで、実際に乳糖への耐性が上がったという結果が出ています。ただし、この分野での研究は多いとは言えません。更なる研究・検証が待たれます
  15. M de Vrese (2001) Probiotics – compensation for lactose insufficiency
  16. それぞれHe T [et al.] (2007) Effects of yogurt and bifidobacteria supplementation on the colonic microbiota in lactose-intolerant subjectsLyn MY [et al.] (1998) Management of lactose maldigestion by consuming milk containing lactobacilli
  17. その他にも、極小の穴が空いた膜を使って乳糖を漉し取る「膜分離技術」という方法があります。この方法ではラクターゼを使用する必要がないため、乳糖を分解した際に生じる単糖類による食味の変化がなく、牛乳本来の風味をほとんど損なわないという利点があります(関 信夫「乳製品製造における膜分離技術」
  18. 乳糖が分解されるとガラクトースやグルコースという単糖類が生じるため、砂糖無添加でも甘味を感じられるヨーグルトなど、「ミルク本来の甘味」を引き出した商品開発が可能になるようです(濱口和廣(2011)「酵母由来ラクターゼ」
  19. 乳糖を8割カット(=2割に削減)した商品は日本でも売られているのですが、もともとの牛乳の乳糖含有率が4.5%なので、乳糖含有率は0.9%以上にとどまってしまいます。ただし、乳糖の8割はカットされているので、症状の軽減には十分役に立ちます
  20. Industry Arc, Lactose Free Food Market – Forecast(2019 – 2024)”
  21. この記事の執筆者が実際に訪れた国や、知人に撮影してもらったもの、Twitterで寄せていただいた情報などをもとにしています
  22. アナフィラキシーの対応について詳しくは、NPO法人 アレルギー支援ネットワークのページをご参照ください
  23. このほか、乳糖不耐症の症状が出にくいチーズやヨーグルトにもタンパク質は残っているため、牛乳アレルギーの人は食用を避ける必要があります(参考:アナフィラキシーってなあに.jp
  24. 一部、ガスの発生については大腸内細菌の活動が関係していますが、これも免疫など身体の仕組み全体には関わりのない、局所的な反応であると言えます。詳しくは「乳糖不耐症の症状はなぜ起こる?〜お腹が痛くなる仕組み〜」
  25. 食物アレルギーひやりはっと事例集 2014