豆知識

乳糖不耐症と牛乳アレルギーはどう違う? 〜症状・原因・反応、3つの違い〜

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似て非なる症状 − 乳糖不耐症と牛乳アレルギー

「牛乳・乳製品を自由に摂れない」という意味ではよく似ている「乳糖不耐症」と「牛乳アレルギー」。混同されてしまうこともしばしばですが、実は、この2つは根本的に違う症状です。

とりわけ、牛乳アレルギーを乳糖不耐症と勘違いしてしまい、リスクを軽視した上で牛乳を摂取して(させて)しまうと、自分や他人の命を危険にさらすことにもなりかねません。

この記事では、混同されがちな乳糖不耐症と牛乳アレルギーの違いについて、症状・原因・反応の3つの観点から解説していきます。

1. 症状の違い − 皮膚や呼吸器に異常があるか

乳糖不耐症と牛乳アレルギーの1つ目の違いは、症状です。乳糖不耐症と牛乳アレルギーでは症状の出る部位が異なり、また症状の重篤度にも開きがあります。

「乳糖不耐症の症状」のページに書いた通り、乳糖不耐症の症状には、次のようなものが知られています。

  • 下痢や腹痛が起こる
  • お腹が張る(腹部膨満)
  • ガスが出やすくなる

乳糖不耐症の症状は、基本的には消化器に生じるものが中心です

一方の牛乳アレルギーですが、こちらの場合、症状の生じる場所は皮膚・粘膜・呼吸器・消化器など、広範囲に渡ります。

牛乳アレルギーの場合、腹痛や吐き気などの消化器の症状に加えて、皮膚のかゆみやじんましん、口の中の粘膜の違和感、のどや気管の息苦しさなど、さまざまな症状が生じるのが特徴です。

さらに、それらの症状のうち2つ以上の重い症状が同時に起こってしまった場合をアナフィラキシーと呼びます。また、意識がもうろうとし、全身の血圧が低下する状態をアナフィラキシーショックと呼び、即座に適切な処置を取ることが必要になります1

乳糖不耐症の場合も下痢や腹痛、嘔吐などが重症化することはありますが、牛乳アレルギーの方が全般的に症状が激しく、また生命に関わる危険性が高いと言えます。

2. 原因物質の違い − 乳糖かタンパク質か

乳糖不耐症と牛乳アレルギーの違いは、症状だけに止まりません。当然ですが、原因となる物質の種類も全く異なります。

乳糖不耐症の症状を引き起こす物質は、主に牛乳に含まれる「乳糖」(ラクトース)と呼ばれる「二糖類」です。「糖」と付いていることから分かる通り、砂糖の主成分であるショ糖などとよく似た構造をしている物質です。

糖類なので、この乳糖を単体で口に含むと、砂糖の約0.3~0.4倍の甘みを感じるそうです。牛乳の甘みも基本的にはこの乳糖によって生じています。

ショ糖(スクロース)と乳糖(ラクトース)の比較(二糖類)

一方、牛乳アレルギーの原因物質(アレルゲン)には、牛乳から水分を除いた1割程度を占める「乳固形分」のうち、「カゼイン」を構成する「αs1-カゼイン」と呼ばれる物質や、液体部分である「乳清」(ホエイ)に含まれる「α-ラクトアルブミン」と呼ばれる物質などがあります。ややこしい単語がたくさん出てきましたが、基本的にはタンパク質と考えればOKです。

牛乳アレルギーの原因物質(アレルゲン)の一つである「αs1-カゼイン」の模式図
  (画像出典:Chemical book

二つの図を比べるとはっきりしているように、乳糖不耐症と牛乳アレルギーの原因物質は、それぞれ「糖」と「タンパク質」である、という風に全く異なります。この違いを押さえておくと、様々な事故を防ぐことができます。

例えば、「ラクトースフリーミルク」は「乳糖」をあらかじめ分解したものですが、乳タンパクはまるまる残っています。そのため、牛乳アレルギーの人はラクトースフリーミルクを飲むことができません2

逆に、「牛乳アレルギー対応のミルク」には、牛乳のアレルゲンをあらかじめ取り除いた商品などがあります。しかし、これには乳糖がまるまる残っているため、牛乳アレルギー対策には効果があっても、乳糖不耐症の症状の予防には効果がありません。

3. 反応の違い − 物理的反応かアレルギー反応か

乳糖不耐症と牛乳アレルギーの最後の違いは、反応のメカニズムの違いです。

乳糖不耐症の症状は、要約すると「牛乳・乳製品の消化不良」ということになり、浸透圧による下痢や、腸管の収縮運動による腹痛など、乳糖という物質に対する「物理的な反応」であると言えます3

(参考)乳糖不耐症のメカニズム

一方、牛乳アレルギーの症状は、「アレルギー反応」と呼ばれる「免疫的・化学的な反応」によって生じます。

アレルギー反応とは、別名「抗原抗体反応」とも呼ばれ、体内にある「抗体」である「IgE」という物質に、体外から入ってきた「抗原」であるタンパク質(アレルゲン)が付着することで、抗体の結合している細胞が「ヒスタミン」などの化学物質を放出する反応です。

牛乳アレルギーを含むアレルギー反応・抗原抗体反応の仕組み
(画像出典:明治の食育

皮膚のかゆみや息苦しさなどのアレルギーの症状は、このようにして放出された化学物質が引き起こすものなのです。

見極めが重要!

以上のように、乳糖不耐症と牛乳アレルギーは、症状・原因物質・反応のそれぞれのレベルで、根本的に異なる症状でした。

こうした区別は、特に自分では状況をコントロールすることのできない乳児・幼児の場合、周囲の大人がしっかりと理解しておく必要があります。

例えば、お子さんが母乳・牛乳を飲んで何かしらの症状が出るようになったとします。もしも、実際は牛乳アレルギーだったにもかかわらず、「きっと乳糖不耐症だ」「乳糖不耐症なら症状は軽いから、少しなら飲ませても大丈夫だ」などと不用意に牛乳を与えてしまうと、そのことがアナフィラキシーの引き金になってしまうかもしれません。

あるいは、知り合いのお子さんを預かった際、「この子は牛乳がダメなの」と聞いていたとしても、その原因が乳糖不耐症の場合と牛乳アレルギーの場合で、対応はまったく異なります。

仮に、そのお子さんが本当は牛乳アレルギーであるにも関わらず、聞いた話から「おそらく乳糖不耐症なのだろう」と判断してしまい、これなら大丈夫だからと低乳糖牛乳を子どもに与えてしまえば、その子の命を危険に晒してしまうことになりかねません。

同じ牛乳アレルギーでも程度は人によって異なり、お菓子に含まれるごく微量の牛乳や、飛沫、さらには肌に触れた牛乳石鹸が原因で症状が出てしまうケースなど、さまざまな事例があるそうです4

過度に気を張る必要はありませんが、子どもに食べ物を与える際は、保護者の方にきちんと相談してからにしておきましょう。

以上、乳糖不耐症と牛乳アレルギーの違いについて解説しました。

乳糖不耐症協会では現在、乳糖不耐症の経験に関するアンケートを実施しています。また、リサーチ担当者や記事執筆者など、現在協力者を募集中です。当協会の理念にご賛同いただき、活動にご協力いただけるという方は、本ウェブサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください

注釈

  1. アナフィラキシーの対応について詳しくは、NPO法人 アレルギー支援ネットワークのページをご参照ください
  2. このほか、乳糖不耐症の症状が出にくいチーズやヨーグルトにもタンパク質は残っているため、牛乳アレルギーの人は食用を避ける必要があります(参考:アナフィラキシーってなあに.jp
  3. 一部、ガスの発生については大腸内細菌の活動が関係していますが、これも免疫など身体の仕組み全体には関わりのない、局所的な反応であると言えます。詳しくは「乳糖不耐症の症状はなぜ起こる?〜お腹が痛くなる仕組み〜」
  4. 食物アレルギーひやりはっと事例集 2014
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