乳糖不耐症の症状

乳糖不耐症とは

乳糖不耐症とは、離乳後、年齢とともに牛乳を消化する能力が落ちてしまう体質のことを意味します1。具体的な症状として、牛乳を飲んだ後の下痢や腹痛、腹部の膨満感などがあり、こうした症状の方を「乳糖不耐症」と呼ぶことも一般的です。国内だけで、自覚症状がある人は、2〜3千万人に登ると推定されています2

乳糖不耐症の症状には以下のようなものがあります。

  • 下痢
  • 腹痛
  • お腹の張り(腹部膨満)
  • 吐き気
  • ガス

乳糖不耐症の診断は、基本的に問診と「乳糖を除去した際の反応の観察」によって行われます3

特別な機器を使わなくても、ほとんどの場合自己診断で十分原因を特定できるため、乳糖不耐症協会では自己診断のためのガイドラインを公開しています。

一般的に、「牛乳・乳製品を摂取した20分〜2時間後」「下痢・腹痛・吐き気・腹部膨満等のいずれかが生じ」「牛乳・乳製品を避けている限り症状が生じない」場合には、乳糖不耐症を発症している可能性が高いでしょう4

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ただし、皮膚や呼吸器にも症状が出ている場合は牛乳アレルギーの可能性があります。アレルギー症状は重篤化する危険性が高いため、皮膚や呼吸器に症状がある場合は、自己診断するのではなく、必ず医師の診察を受けるようにしてください

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乳糖不耐症は自然な症状

母乳や牛乳に含まれる「乳糖」(ラクトース)と呼ばれる成分を消化・吸収するためには、「ラクターゼ」と呼ばれる分解酵素が必要です。そのため、授乳期間中の赤ちゃんは基本的に体内でラクターゼを生み出すことができるようになっていて、母乳から十分な栄養を取り出せる仕組みになっています。

しかし、授乳期間が終わると、ほとんどの人でラクターゼを生み出す力が低下していくことが知られています5。ただし、低下の度合いやスピードには個人差があり、中には何歳になっても牛乳を飲み続けられる人もいます。ラクターゼの産生量が一定を下回ってしまうと、下痢や腹痛などの自覚症状が出るようになります。

「小さい頃は大丈夫だったのに、最近牛乳を飲むと調子が悪い」という方は、このような年齢とともに自然と生じるタイプの乳糖不耐症であると考えられます。減少の速度は人によって異なるため、小中学生のうちに乳糖不耐を発症してしまうケースもあります。

また、乳児の場合は、急性の下痢などによって一時的な乳糖不耐を発症する場合があります二次性乳糖不耐症6。このタイプの乳糖不耐は適切な治療を行えば比較的短い期間で完治しますが、必ず専門の医療機関を受診するようにしてください7

意外と大変な乳糖不耐症の生きづらさ

「症状は軽いんでしょ」「牛乳を飲まなければいいじゃん」などと思われがちですが、乳糖不耐症には様々な場面で困難が伴います。乳糖不耐症協会では、SNSなどを通じて、当事者の経験・語りの集積を行っています。

避けられない

牛乳を飲む量を減らしたとしても、日常生活の中で乳製品を避けることは簡単ではありません。カルボナーラやグラタン、ホワイトシチューといったクリームを使ったメニューは心から楽しむことができず、カフェに入って豆乳のオプションがなければブラックでコーヒーを飲むしかありません。チョコレートやアイスクリーム、ケーキなどといった洋菓子の大部分にも乳糖が含まれているため、後から症状が来ることを覚悟して食べることになります。

「乳糖が入っているのではないか」「調子を崩してしまうのではないか」などと疑心暗鬼になるうちに、食事を純粋に楽しめなくなってしまうこともあります8

症状が重くなりうる

乳糖不耐症は進行する症状です。進行具合によっては、乳糖の許容量はより少なく、症状の重さはより重くなってしまいます。

痛みが激しい人、ひどい下痢に襲われる人、とにかく吐き気がする人など、特徴的な症状は人によって異なりますが、ほんの少しの乳糖を摂取するだけでそうした症状に襲われてしまうケースもあります。そうなってしまうと、上述したように乳製品を避けて生活することは意外と難しいため、ほとんど毎日症状を抱えながら生活することになります。

食事だけでなく、乳糖は添加物としても一般的なため、症状が最も重い場合では、頭痛薬や整腸剤に添加されている乳糖でお腹を壊してしまうことさえあります。

周囲の目が気になる

乳糖不耐症のようにトイレ関係の症状が出てしまうものは、どうしてもイメージが良くありません。ふとした拍子にお腹が鳴ってしまったり、げっぷやおならが出てしまったり、お腹が痛くなってトイレに駆け込んだりするのは、乳糖不耐症の症状としては仕方のないことですが、どうしても周りの目が気になってしまいます。

それどころか、実際に周囲から「だらしない」「品がない」「汚い」などの謂われないイメージを負わされてしまい、学校や職場で心ない言葉をかけられてしまうケースもあるようです。

条件が悪ければ、「周囲に迷惑をかけてしまっているのでは」「嫌われてしまうのでは」といった不安から、精神的に追い詰められてしまうことも考えられます9。そこまで行かなかったとしても、「お腹が弱い」ことが「少し恥ずかしいこと」とされているような社会の中では、乳糖不耐であることを少し人に話しづらい土壌があるのではないかと思います。

乳糖不耐症の対処法

乳糖不耐症を完治することは難しいですが、症状との基本的な付き合い方を押さえることで、生活の質を大きく改善することができます。次のページに対処法をまとめているので、参考にしてみてください。

対処法を詳しく

注釈

  1. この体質を指して、慣用的に「乳糖不耐性」という表記も使われます
  2. 研究によって数字は異なりますが、20~30%の人に症状があると言われています
  3. MEDLEY「乳糖不耐症の検査」(最終閲覧 2019年10月)
  4. 具体的な症状についてや、乳糖不耐症と似た症状のある他の病気については、MEDLEY「乳糖不耐症の症状」のページをご参照ください
  5. 離乳後のラクターゼ産生能力の減少自体は、東アジア系の人の約9割以上で起こる一般的な現象ですM de Vrese (2001) Probiotics – compensation for lactose insufficiency. また T. Sahi (1994) Genetics and Epidemiology of Adult-type Hypolactasia
  6. 赤ちゃんの下痢が長引く場合はこのタイプの乳糖不耐症が疑われます。
  7. 「ノンラクト」などのラクトースフリー粉ミルクの使用には医師への相談が必要となります。また、まれに生まれつき母乳を分解することができない子供もいます先天性乳糖不耐症)。授乳中に原因不明の下痢が続く場合は、医師に相談してください。
  8. また、乳糖は様々な食事に含まれているため、食後に腹部の不快感を感じるようになってから原因を特定するまでに時間がかかってしまうケースもあります。とりわけ乳糖不耐症の認知度が低い現状では、自覚症状はあっても原因を特定できていない人や、適切な対処法を実行できていない人が多くいるのではないかと考えられます
  9. 例えば、お腹が鳴ってしまうことに対する不安症状を「腹鳴恐怖」と言い、ストレスと関連した腸の機能不全である過敏性腸症候群(IBS)などと同じく、乳糖不耐症と合併して生じる場合があります